閉じていた目を開けると、見慣れた己の庵の中だった。
泰継は華奢な指先で首飾りの珠に触れ、そっと息をつく。
立ち上がり、庵の外へと出る。
すると、
「泰継!」
聞き慣れた耳に心地よい声が、聴き慣れない、慌てた調子で名を呼んだ。
一瞬、逃げ出したくなるのをどうにか堪えて、相手が近付いてくるのを待つ。
いつにない早足で、癖のない青緑の髪を靡かせながら近付いてきた彼が、
ふわりと泰継の細い身体を抱き締めた。
「良かった…戻って来ていたのだね」
「……」
心底安堵した様子で言う彼の胸に頬を寄せつつも、泰継は無言だった。
その頑なな気配に気付いたか、彼が溜息交じりの苦笑を零す。
「悪かったよ。ただの冗談だったんだ。相手の女性も了承済みさ。
だが、悪戯が過ぎたのは事実だ」
俯いたままの泰継の耳元に囁く。
「本当にごめん。君の心を試すようなことをして。可愛い人、どうか、顔を上げておくれ。
私は一瞬でも君の顔が見られないと寂しいのだよ」
その言葉に、やっと泰継が顔を上げる。
「お前があのようなことをしたのは、私が素っ気無い所為か?」
「え?ああ、まあ、正直なところを言えば、そうなのだけれど」
大きな瞳で見詰められ、彼は少々躊躇いつつも正直に応える。
「あの男の言ったとおりなのだな」
「何だって?」
呟いた言葉を彼が訊き咎めた。
「泰継、「あの男」とは?君は私が探している間、一体何処にいたんだい?」
珍しく慌てた調子で投げ掛けられた問いには応えずに、泰継は訊き返す。
「いなくなった私を必死に探したのか?」
「……ああ、当たり前だろう?私は泰継無しでは生きていけないのだから」
少し拗ねたような応えに、泰継は花が綻ぶように微笑んだ。
細い腕を伸ばして、相手の首に縋り付く。
「そうか。ならば良い」
珠玉の笑顔に問いを封じられる形となった彼が、溜息をつく。
「叶わないね、君には」
しかし、立ち直りの早い彼は、すぐにいつもの調子を取り戻した。
腕の中の華奢な身体を抱き締める腕に僅かに力を込め、泰継の形の良い耳の下に口付ける。
抱き締めた身体が僅かに震えた。
「翡翠」
咎めるような泰継の呼び掛け。
聞かぬ振りで、今度は泰継の白い耳朶を甘噛みする。
「お前はいつもそうだ」
温かい唇と手の動きに過敏な反応を示す身体を、何とか抑えようとしながら、
泰継が彼を睨むと、
「駄目?」
と、何処か子供が強請るような調子で訊いてくる。
「……」
泰継は無言だった。
しかし、徐々に染まってくる頬を隠すように、より一層強く彼の首にしがみ付いた。
強制終了〜(スンマセン、これが限界…/苦笑)。 有り難くも、翡翠氏とつぐりんのお話を読んでみたいとのお言葉を幾つか頂いたので、 「天使襲来」後の二人の仲直りの様子をちょろちょろっと書いてみました。 二人はいつもこんな感じで仲直りしています…ただそれだけ(苦)。 しかし、初書き翡翠氏が…誰だよ、これ、翡翠氏じゃねぇよ……(泣) 翡翠氏って、年下の彼だから、つぐりんの前では少し子供っぽい言動もするんじゃないかな… と思って書いたのですが…やり過ぎたかも〜(大汗) そんな苦悩(?)の中、自分で書きながら、「このやろう!!(笑)」と思った台詞が一つ。 さあ、それはどれ?!(訊くな) そんな戯言はともかく、もし期待して御覧頂きました方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません〜〜っ!(焦) でも、つぐりんはそれなりに、可愛く仕上がりましたので、自分的には満足♪(甘いぞ!) 戻る