龍は波濤を呼ぶ
四龍(スーロン)島シリーズ九作目、『龍は波濤を呼ぶ』。
発売当初は、青龍(チンロン)篇クライマックスへ向けてのシリーズ三ヶ月連続刊行の第一弾でも御座いました。
ついに、青龍との全面対決!とのことで、今回の表紙は色めいたものではなく(笑)、
いつもの主人公おふたりに加えて、『青龍(チンロン)』、天狼(ティエンラン)、玲泉(リンチュアン)、千雲(チェンユン)、李(リー)、
とお話のキーパーソン(?)とも言える人物が描かれています。
今までのシリーズ史上、最も描かれる人数の多い表紙ではないかと…
正面にいる飛(フェイ)くんが凛々しくて綺麗です♪←一回は褒めないと気がすまない(苦笑)。
ついに『青龍(チンロン)』がその牙を剥いた。
白龍(バイロン)を欺き、樹林房(シュリンファン)主人の命を狙ってまでひそかに木材を集めてきたのは、
白龍を攻撃する船団を作るためだったのだ。
だが、敵がどこに船を隠しているのかわからず、飛(フェイ)はあせりを覚える。
一方で、街を騒がせ続けた祥船(シャンチョアン)の跡取り千雲(チェンユン)が、
青龍と内通していた証拠の書状を残して突然失踪する。
いよいよ対決の時が迫っていた……。
四龍(スーロン)島シリーズ第9弾。
(文庫折り返し部分より)
う〜〜ん、そうだったんですねえ…(しみじみ口調)
『青龍』とその懐刀、楽海(ユエハイ)ジジイ(笑)が、酒坊街建て増しにかこつけて、
溜め込んでいた木材は、朱龍の悪徳材木商(既に始末済)から横流しされた樹林房の木材で、
それでもって、その良質な木材を使って、白龍攻めのための大きな船を造ろうって
魂胆だったんですよ、お嬢さん!!←?
しかし、そんな目立つであろう大きな船を隠す場所は、青龍の港にはありません。
一体どこに…?と飛くんは焦る訳ですが、そんなささくれだった心をさらにマクが乱してくれる訳です(苦笑)。
ことあるごとに、前作で助けられなかった、しかも飛くんの母疑惑のある玲泉のことに触れるマク。
わかっちゃいるけど、ヤな男です!
しかし、街の大事を前に、飛くんは必死に玲泉を助ける邪魔をしたマクに対する憤りを抑え、
なるべくマクとは目を合わさないようにしています。
君の気持ちはよ〜く分かる!!
毎度ながら、時と場所を選ばないマクのちょっかいには呆れるばかりです。
…むしろ、読んでるこちらも徐々にどうしようもなく腹が立ってきます……(沸々…とね)
えー加減にしろよ、コラ!!(怒)
しかし、怒ったところで、マクのイケズは止まらないのです(苦笑)。
一方で、敵さんは着々と白龍攻めの準備を進めている訳です。
ところで、前作『戯れる』で、飛くんが青龍屋敷に忍び込む手助けをしてくれた酔熊(ツォイション)。
実は彼、青龍の色街、高楼街(カオロウチエ)の頭(トウ)だったんですね〜。
常から白龍の花路(ホワルー)と引き合いに出されるほどの猛者を揃えた高楼街。
その頭に、青龍屋敷から白龍攻めの命令が下されるのです。
陸と海の両方から攻めて白龍を挟み撃ちにしようという魂胆です。何と卑劣な!
しかし、お屋敷のやり方をあまり良く思っていない酔熊は、
そのことをかつての『青龍』のお目付け役であった大酒庁(ターチュウティン)長老、文海(ウェンハイ)に伝えます。
そこで、人の良い文海は初めて、主人と弟楽海の企みを知るのです。
このひとも、もういい歳で、病気がちでもあるっていうのに、
とんでもない主人を戴いたばっかりに心労が絶えません(苦笑)。
主を諌めようと、マッハで青龍屋敷へ出向いた文海。
そこで文海は白龍攻めの船団が、罪人流刑の地、海牙(ハイヤ)に潜ませてあることを知らされます。
しかし、日頃からその真っ直ぐな気性を煙ったく思っていた『青龍』が、ついに彼を切り捨て、
文海は弟楽海の手によって、命の危機に…!
「兄のようにふるまわねば海牙へ流すぞと罵られた弟の悔しさを思い知られるがよろしい……」
って、楽海ってばこの歳になっても、文海に対する強烈なコンプレックスを抱え続けていたのねえ……
ここまで長く溜め込んでいたものは、もはや昇華不可能だろうね、あ〜あ…(空)
なんて、ジジイに同情している場合じゃありません!!(ヒデエ)
ほぼ、同時期に飛くんも知っている酔熊の馴染の女性、笑鈴(シャオリン)が青龍屋敷に捕らえられ、
酔熊は彼女を人質に白龍攻めをしくじらぬよう脅されるのです。
しかし、そこで敵の手落ちが。
笑鈴が閉じ込められた蔵に、気絶させられ袋詰めにされた文海が運ばれたのです。
そこで気が付いた文海は、高楼街の頭の知り合いだという笑鈴に伝言を託します。
「海牙に船団が」と。
その後、笑鈴は何とか文海が自力で脱出できるよう手を打ち、その伝言を酔熊に伝えます。
すると、今度はその伝言を花路の頭にも伝えるよう酔熊に頼まれるのです。
笑鈴は酔熊との結婚の約束と引き換えにそれを承知し、見事追っ手を振り切って、
飛くんにその伝言を伝えたのです!流石、笑大姐(シャオタージエ)!!
彼女が今回の一番頑張ったで賞です!!!
一方、青龍の悪事の片棒を担いでいた祥船の跡取り、千雲は、
病身の父の部屋から金の貸付の証文をこっそり持ち出します。
次いで、妾宅で火事騒ぎを起こして、それらを焼いてから姿を消すのです。
自分が青龍と通じていたという証拠の書状を残して……
そのことは街じゅうの噂となり、父である祥船頭領、高浪(カオラン)もそのことに大きな衝撃を受けます。
しかし、飛くんはどうしても千雲が、己の私利私欲の為に、青龍と結んでいたとは思えないのでした。
・「龍は波濤を呼ぶ」名場面
今回は、皆がピックアップしそうなシーンにするかな…それは、ラストです!
という訳で、ただでさえクドいストーリーの説明を(死)。
飛くんの予想は見事に当りました。
千雲は真実、白龍を陥れるために青龍と結んだのではなく、
白龍の港に溜まってしまった膿を出し尽くして洗い流す為に、祥船を傾け、
それでも、その膿の発端となった父と祥船を生き残らせる為、
全てが自分の仕業と見えるよう仕向けたのでした。…泣かせる(涙)。
しかし、敵が海からだけでなく陸からも白龍を潰そうとやって来ることを知らされ、
自分の身を汚してまで守りたかった港が危機に晒されてしまったことに遅ればせながら気付きます。
咄嗟に、実行犯(笑)天狼を殺そうとしますが、名うての刺客に敵う筈もなく…
千雲は裏切者として捕らえられてしまいます。
一方、敵の船団が海牙にいるのみならず、陸からも高楼街が攻めてくると知った飛くんは、
陸は花路、港は李を始めとした馴染の船主らを中心として、敵を迎え打つ算段を整え、
それでも尚、厳しい状況を少しでも打開する為に、単身海牙へ乗り込みます。
火薬を持ち込んで、白龍の港に入る船自体の数を減らそうとするつもり。
カッコ良過ぎる!!
ひとりでは危険だと渋る仲間に、白龍屋敷から手勢を借りると言った飛くん。
その手勢とはマクなんですな。
今まで、さんざ意地悪をされてぶち切れ寸前だった飛くん。
ここに到って、容赦なくマクを危険な敵の根城への道連れとします。
でも、その程度の意趣返しって辺り、飛くんっていい子ちゃんです(褒めてます)。
マクと小さな諍いを起こしつつも、幾つかの船を転覆させるのに成功した飛くん。
しかし、予定していた数の船を爆破することは叶わず、運命を港で迎え打つ李たちに委ねます。
次いで、飛くんは、突然の襲撃に混乱する最中、小屋に捕らえられていた千雲を見付けます。
白龍に戻ろうとの飛くんの言葉を、千雲は穏やかに、しかし、きっぱりと拒絶。
そのとき、千雲から天狼が同じく小屋に捕らわれていた夫人、玲泉を担いで出て行ったと聞かされ、
怪我をして動けない千雲をマクに預け、白龍へ戻るよう伝えてから、その後を必死に追います。
海牙の崖上での天狼との攻防。
しかし、手強い敵に飛くんは、ついに崖下へと投げられてしまいます!ギャー!!
何とか、岩の先端を捉えて、直行落下を免れた飛くんでしたが、小刀片手に天狼が目の前。
絶体絶命のピンチ!!!
そのときです。気が付いた玲泉が短刀で天狼の脇腹を刺したのです!おお!!(驚)
しかし!意外な報復に、恨み声を吐きつつ、崖下に落ちていく天狼の腕が玲泉を捕らえ…
彼女はにっくき刺客共々崖下へ!!ひいっ!!
落ちていこうとするのを飛くんが必死に腕を伸ばし、彼女の腕を捕らえます。
しかし、片手だけではふたり分の体重を支えることは叶わず、もはやこれまで、というときに、
マクが登場。掴んでいた岩から滑らせてしまった手首を捉え、残酷な言葉を告げます。
「その女を離せ」と。
自分でもふたりは引き上げられないから、と。
マクの言う通りだと分かっていても、飛くんは決断できません。そりゃそうだよ!!(泣)
そんな飛くんに、玲泉は手を離すよう言うのでした。
飛くんが母親なのかと問おうとしたのを否定し、自分は母親ではないのだから、
命を惜しむ必要はないと、もう一方の手に持った短刀で自分の手首を切り付けようとします。
それを止めさせようとした飛くんが、反射的に(?)ついにその手を離してしまい……
彼女は群青の波濤の只中へ消えていってしまうのです…呆然……
私より茫然としてしまった飛くんは、マクに引き上げられたことも気付かぬまま、
ひたすら彼女の消えた最後の光景を脳裏に繰り返すのです。うわ〜ん(大泣)。
「正気を失ったか、花路」
問われたが、声は出なかった。
ぐい、と顎をつかまれて、波ばかりを見つめていた目のなかに銀灰色を見いだす。
耳の奥では、波の音ばかりが鳴っている。
そのなかに、玲泉の声はない。
(中略)
……波の音しか、聴こえない。
すがるように目のまえの胸にからだを預け、息苦しさに喘いで、明るくなりつつある空を仰ぐ。
あおのいたくびすじにかかる、しなやかな指。
それを、まるでなにかの救いのように感じて、飛はゆっくりとまぶたを閉じた。
群青に吸い込まれる白い色が、閉じたはずの目に繰り返し映るのは、なぜだ。
やめてくれ、と抗う四肢から力が抜けていく。
海鳴りの帳の向こうから低い笑み声が、
「賭けを投げたか、花路」
波音のあいまに耳の奥へとすべり込んできた。
そのあとに、囁かれる甘い脅し。
「喉笛を咬み切ってやろう」
いいか……とくびすじに触れられて、なんと応えたのかが自分でわからない。
……群青に……白。
のけぞったままの喉に、マクシミリアンの歯が柔らかく触れる。
冷えた肌に、吐息が熱い。
その吐息だけが、熱い。
(本文216〜218頁より)
飛くんが、マクに、
くっ、喰われるうぅ〜〜っっ?!!
お、オマエ、飛くんが茫然自失なのにかこつけて〜〜っ!!
飛くんついに、よりにもよってこんなときに貞操のピ〜ンチ!!
という訳で続きは次回へ!!となる訳です。
…な、生殺しっ!!(でした、当時/笑)
……飛くんの心の行方も、気になっていましてよ、もちろん!(言い訳がましい…)
このシーンは、ラストのラストということで、浅見さんのイラストが入らなかったことを、
著者の真堂さんも非常に惜しんでおりました。
そこで、『魅惑のラストシーン』と題し、読者のイラストを募集する企画まで打ち上げたという、
ある意味記念すべきシーンでもあるのです(笑)。
・「波濤を呼ぶ」ベストオブイラスト!
今回はまともなイラストをピックアップ(笑)。
本文101頁のイラスト♪
樹林房との商いの取り決めのために、大船主組合の会合に富浪(フーラン)と西海風(シーハイフォン)の名代として
同席した飛くんの凛々しいお姿を描いたものです、らぶ♪
樹林房との取引が再開されたことと、
その後の樹林房の木材の取引に白龍屋敷が間に入ることをマクから告げられ、慌てふためく船主たち。
しかも、樹林房との取引を最初に願い出た富浪と西海風の取り分を、
初めから確保するとの話に反発します。
この場にその身内さえいないとは話にならないと言う彼らに、
その名代ならば隣にいるとマクは告げ、それに応えて飛くんは、
衝立の向こうの船主たちに向かって口を開きます。
「樹林房との商いの取り決めに際して、富浪と西海風名代をつとめる……花路だ」
部屋のなかが一瞬、しん、と静まり返る。
花路……と、なかのだれかがつぶやいたとたん、いっせいに怒り声、罵り声がわき起こった。
(中略)
「そもそもいったいなんで陸の……」
なぜ陸の花路が、とみなまで言わせず、飛は席を立ち、
「お静まりいただこうか!」
その一喝で、見事に一同を黙らせた。
(本文100頁より)
かっ、カッコ良い〜〜〜♪(惚)
こういうビシッとした場面も絵になるのが、飛くんの魅力です!!
そもそも、樹林房との商いが再開されたのは、飛くんの努力の賜物なのです。
彼が口出しする権利はそれだけでも充分あります!!
のほほんと暴利を貪っていた大船主連中に、四の五の言う資格はな〜い!!!
そんな強気な彼も只今、茫然自失です(泣)。
身(笑)も心もピンチな飛くん。
彼は一体どうなるの?!との不安と期待(?)を胸に、私は一ヵ月後発売の次作をじりじりしながら、
待つことになったのでした。
短くするつもりが、結局いつも通りの長さに(苦)。
管理人ダベリング劇場と化しているこの四龍島れびゅ。
最後までお付き合いいただきまして、有難う御座いました!!
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