花街恋夜

うむぅ、今回の壁紙はちょっと、この形式のれびゅページには向いてなかったか?(汗)
…それはさておき(?)、四龍(スーロン)島シリーズ二十冊目は番外編の『花街恋夜(かがいれんや)』。
この辺りから、四龍島本編タイトルが「龍は」で始まるのに対して、番外編は「花」から始まるのが定着致します。
言わずもがなですが、「龍」はマク、「花」は飛(フェイ)くんってことで♪
表紙は、飛くんと羅漢(ルオハン)、葉林(ユエリン)、孫(スン)の花路(ホワルー)の面々を描いたイラスト。
前作『闇に堕つ』があっただけに、穏やかに微笑む飛くんの表情にほっとします。
また、その飛くんの笑顔が可愛いんだわ♪そして、やっぱり腰が細い(笑)。

四龍島、白龍(バイロン)市。
花路一の娼館から素封家に引き取られるはずの娼妓が逃げ出した。
娘は飛のもとに現れると、「好きだから側において欲しい」と泣きだして…?!(花街恋夜)
白龍屋敷の執事、万里(ワンリー)には、花路の頭(トウ)をつとめる弟がいた。
血のつながらない弟遠里(ユァンリー)が、大龍(ターロン)に殉じてこの世を去った背景には、兄弟の悲しい絆が隠されていて…。(遠里)
大人気四龍島シリーズのお楽しみ番外編!

                                                      (文庫折り返し部分より)

↑のあらすじ説明でも分かるように、今回の番外編は表題作「花街恋夜」と「遠里」の二本立て。
当方飛くんファンであるが故に(笑)、こちらでは主に飛くんが登場する、
「花街恋夜」に焦点を当てた偏ったレビューをお届けいたします、その点ご了承くださいませ(苦笑)。
…しかし、少しは「遠里」にも触れとくべきか…?
こちらでは詳しくレビューしませんが、「遠里」も良い作品です!(飛くんが登場しない点を差し引いても←それが基準か/笑)
万里と遠里の兄弟愛(にしては行き過ぎな感もあり/笑)とすれ違いによる別れには泣かされました(涙)。
万里の本名や生まれた家のことも明らかになっているので、万里が気になる方は必読のお話でありましょう!

…という訳で、「花街恋夜」レビューです。
この作品は、その昔雑誌『Cobalt』で「真堂樹特集」が組まれた際
(あのときは表紙も四龍島で嬉しかったなあ…♪懐かしい…/笑)、読み切りとして掲載されたものでした。
何と飛くんに想いを寄せる娘(↑では「娼妓」となってますが、まだ娼妓にはなってません)が登場するというお話!
愛鈴(アイリン)というその娘は、母と同じく、花路一の妓楼、梅雪楼(メイシュエロウ)の娼妓となるべく育てられていましたが、
龍江街(ロンチャンチエ)に住まう素封家のひとつ、江(ジァン)家の息子に見初められ、金ずくで引き取られることになっていました。
江家の息子は、花路内では噂に名高いどら息子(しかも見目も悪い/笑)で、また、愛鈴もその男を嫌っていたので、
梅雪楼主人も正直なところ、愛鈴を預けるのは気が進まなかったのですが、
江家には昔世話になった恩もあり、断り切れなかったのでした。
しかし、ついに江家に引き取られるその日、愛鈴は運ばれる途中の俥から逃げ出してしまいます。
その騒ぎを知った飛くんは、取り敢えずは様子見と判断して、羅漢と共に彼の棲家の古妓楼へと戻ります。
が、その古妓楼に噂の愛鈴が逃げ込んでくるのです。
階下の物音に用心して下りていった先で、いきなり正面から抱き付かれてしまった飛くん。
そこで真正面から、「ずっと好きだったのだ」という大告白を受けてしまいます。
飛くんと一緒にいた羅漢、梅雪楼まえから戻ってきてその場面を目撃した葉林と孫、
皆が皆その告白を前に息を呑んじゃう辺りが何だか可笑しい(笑)。
不器用で色恋沙汰には無縁な花路の男たちならではの反応ですね〜(更に笑)。
その中であっけに取られつつも、一番冷静なのは、告白された当の飛くんだったり。
一体誰なのだと相手に問い、そこで大告白をかました相手が、逃げ出した愛鈴であることが皆に明らかになります。

梅雪楼主人に密かに愛鈴の無事を知らせて江家の出方を待ち、いちおう古妓楼に愛鈴を匿うことにした飛くん。
自分と羅漢で世話をしようと言い掛けると、飛くんは駄目だと皆が揃って反対です。
特に孫の反対振りが凄い(笑)。

「そりゃあ、頭(トウ)も男ですからね。まともに女に抱きつかれたら、いちころに決まってます!
日ごろ抑えてるもんが、む……むらむら込み上げて、我慢もなにもふっとんじまいますよ。
長い髪とか、柔らかい胸のあたりとか、そんなもんをまえにすりゃあ、
いくら花路の束ねっていったって、平気な顔してられるわけがねえ。
血が上がり下がりして、息が荒くなって、邪魔な帯なんぞはかなぐり捨てて、
床に短衫(トアンシャン)脱ぎ捨てて、髪を乱した頭がこう……ああっ、気がおかしくなっちまう!」(26〜27頁)

作者の真堂さんも突っ込まれてましたが、次第に妄想の対象が愛鈴から飛くんへと移行しておるぞ、孫よ…(笑)
孫にとっては、頭(飛くん)の乱れた姿こそが気がおかしくなる最大の要因のようです(笑)。
でも、心配はご無用。
飛くんは男じゃないから!姫だから!!(ここに阿呆がいますよ)
とはいえ、結局、孫の猛反対振りに気圧される形で、飛くんは古妓楼から追い出されてしまいます。

・「花街恋夜」名場面。

うむむ、今回は候補がふたつあるんですが、一方はちょうどイラストが入ってるので、
ベストオブイラストのところで語ることにして、こちらで取り上げるのはこの場面にしましょう。
次の日、飛くんが古妓楼を訪れると、愛鈴は面倒を見てくれることになった孫の弟分たちとすっかり打ち解けていました。
しかし、孫の弟分たちは彼女を飛くんに近付けまいともするのです。
飛くんのことは諦めるようにと言う彼ら。

「知ってるだろ、花路の男は色恋沙汰が許されねえって」
「でも……」
「気持ちはわかるぜ。
頭は、男の俺たちでも惚れ惚れするような美形だし、喧嘩の腕っていったら、そばで見てるとくらくらするくらいのもんだ。
鬼みてえな見てくれの猛者を、まるできれいな舞を舞うみたいにして伸しちまう。けど、それなのに、こんな細身だろ。
祭礼の衣装なんかを着てたら、いくらそばで見てても見飽きねえ。
そこらの女なんぞよりもよっぽどきれいで、どきどきしてくるくらいでさ。
見まわりのときなんかに笑いかけられると、ここらへんがなんだか、きゅん、って……痛てっ」
「褒めすぎだ、おまえたち」
「す、すみませんっ、大兄」

                                                  (本文30頁より)

頭ラヴは孫のみならず花路全体に浸透していることが実によく分かるエピソード。
…そんな意味で今回の名場面としてセレクトです(笑)。
飛くんに笑いかけられると、胸が「きゅん」となるって…!ナイスです!!(大笑)
まるで、学園のマドンナに憧れる男子生徒の反応のようですね!!

諦めるよう言われて、神妙な(?)様子でいた愛鈴でしたが、ふと、
窓の外で花路の少年たちが拳法の稽古をしているのに気が付き、懐かしげにその光景を眺めます。
その様子に、彼女も幼い頃、花路の少年たちに混じって拳法の稽古をしていたという羅漢の話を思い出す飛くん。
そんな彼に、愛鈴は恋を諦める代わりに、一日だけでいいから花路の仲間にして欲しいと願うのです。
彼女の瞳に切羽詰った想いを読み取った飛くんは、彼女の願いを受け入れます。
そうして、飛くんの短衫を借りて着た愛鈴は、その場で長い髪も切り落としてしまいます。
この行動からも、ただのお遊びで彼女がこんなことを言い出したのではないことが窺えます。
そして、概ねにおいて勘の良い(働かない場合もある…/笑)飛くんはこのあたりから何となく、
彼女が想いを寄せているのは自分ではないのではないかと感じ始めます。

・「花街恋夜」ベストオブイラスト。

今回は『Cobalt』掲載時にも、どどんと1頁丸々使って載せられた(笑)イラストをセレクト!

51頁のイラストです。

羅漢と愛鈴の目前で、マクに押し倒される飛くんの図(笑)。

梅雪楼主人から預かってきた帳簿を白龍屋敷へ持っていくことになった飛くん。
羅漢に声を掛け、角灯を持ってもらうために、孫から弟分を借りようとしたとき、愛鈴が供を申し出ます。
それに羅漢がいざとなったら頭を守るくらいの覚悟がある者しか連れて行けないと、
厳しい声で異を唱え、その言葉に愛鈴はたちまちしゅんとなってしまいます。
それを見かねた孫の弟分たちが、助け船を出し、飛くんもまた、
愛鈴に自分と羅漢とを守るという気持ちがあることを確認した上で、彼女を白龍屋敷への供として連れて行くことにしました。

白龍屋敷門前で、屋敷執事の万里を呼んで待っていると、万里の後ろからマクもやってきます。
そう言えば、この話ではここでマクが初登場(笑)。
厄介だと内心思いつつ向き合う飛くんに、毎度お馴染みの戯言を投げ掛けたマクでしたが、
飛くんの背後にいる愛鈴が女であることにすぐ気付きます。
愛鈴に言葉を掛けるマクに、不穏なものを感じた飛くんは、マクが動いたと同時に、とっさに彼女を庇おうとしますが…

「きゃあああああああ!」
すっとんきょうな悲鳴は、愛鈴の口からほとばしり出たもの。
彼女を庇ってまえへ出るはずだったところを、思わぬ力で抱え込まれて、飛は一瞬平衡を失った。
痛みも感じないほどきれいな足払いをくわされて、目の端にとらえていた灯火の明りがくるりと逆さまになる。
「お……俺を押し倒してどうする!」
「腕前を見せてもらうと言ったろう。
女の身で潔く花路だと言ってのけるなら、大事な頭が襲われるのを身をもって助けるかどうか」
「つまらない真似を……っ」
「つまらなくもないぞ、なかなかに」
戯言、とその言葉を遮るとちゅうで、マクシミリアンの肩越しに愛鈴を見た。
持っていた角灯をふり上げる彼女の姿に、思わず高い声を上げる。
「とめてくれっ、羅漢!」

                                                 (本文48頁〜49頁)

と、こんな(↑)場面がそのまんまイラストになっている訳です。
愛鈴にちょっかい掛けると見せ掛けて、隙を突いて本命(飛くん)を押し倒すとは…流石だ、マク(笑)。
飛くんを押し倒してるマクの表情がものすご〜く愉しそうです。
「つまらなくもないぞ」ってねえ、そりゃそうでしょうよ!
押し倒されて驚き慌ててる飛くんも可愛いしな♪(ニヤリ)
頭を守らなければ!と、咄嗟に街の主に向かって角灯を振り上げてしまう愛鈴もナイス(笑)。
寸でのところで、羅漢が愛鈴を抑えたので、マクが殴られることはありませんでしたが、
そんな場面も見てみたかったかな〜と、ちらりと思ったなんて言えません(言ってるよ/笑)。

屋敷からの帰り道、飛くんが羅漢とともに、愛鈴の度胸を褒めたところ、羅漢の言葉により嬉しそうに反応する彼女。
飛くんはそこで、彼女の想い人が羅漢なのではと気付くのです。

飛くんたちが古妓楼へ戻ると、ちょうど大牌楼前で喧嘩沙汰が起き、
葉林がもしかしたら愛鈴を取り戻しに来た江家かもしれないと出て行ったことを仲間から知らされます。
羅漢とともに飛くんは現場へ駆けつけますが、喧嘩沙汰の元は江家ではありませんでした。
そして、手際よい飛くんの指示と行動で喧嘩自体も治まりそうになったとき。
騒ぎを起こした男が逆上して刃物を持ち出し、羅漢に向けて投げつけます。
あれならば大丈夫と飛くんは、その場を見守りますが、そこに古妓楼に置いてきた筈の愛鈴が、
羅漢を庇おうと、飛び出してくるのです。
腕を傷付けられてしまった愛鈴。
動揺した孫の弟分が思わず名を呼んでしまったことが災いして、事情を知らない花路の他の仲間たち、
そして、何よりも彼女を探していた江家の使いにも、彼女の居所が知れてしまいます。

その後、厄介なことになってしまった詫びも兼ねて梅雪楼主人と話した飛くんは、
彼から江家の息子の勝手放題に困っていたことを打ち明けられます。
江家に対する以前の恩は充分に返した、縁を切っても一向に構わないと言う主人の言葉を受け、
飛くんは江家の息子を懲らしめる策を提案し、梅雪楼の協力も取り付けます。
それから羅漢の棲家に戻ると、古妓楼から締め出された羅漢たちから、
手当てを終えた愛鈴が古妓楼の一階に閉じ篭ってしまったことを聞かされます。
飛くんは愛鈴とふたりきりで話したいと言い、大いに動揺する(笑)孫の弟分を尻目に、
羅漢の一緒に行こうという申し出も断って、ひとり古妓楼のなかに入ります。
そうして、彼女と話した飛くんは、彼女の真実の想いを引き出すのです。
…こういう話す相手から素直な気持ちを引き出せちゃうところが、飛くんは上手いよな〜…(感心)
やっぱり優しいからなのかしら♪(飛バカ)
少しでも羅漢の近くにいられて、仲間だと言ってもらえて満足だと覚悟する愛鈴に、
飛くんは江家に引き取られたい気持ちは全くないかと確認します。
江家の息子は大嫌い、できるならばあの茄子みたいな顔(笑)を思い切り蹴飛ばしてやりたい、
ときっぱり言った愛鈴に、ではそうしようと飛くんは応えるのです。

そして、ついに江家のどら息子が、手強そうな用心棒を引き連れて、花路に乗り込んできます。
しかし、待ち構えていた飛くんたちに、用心棒連中を瞬く間に伸され、江家の息子は一人残されてしまいます。
逃げようとしたところを葉林に阻まれ、逆上した江家バカ息子(笑)は刃物を取り出します。
そのとき、加勢をと言う飛くんの言葉に応じて、前へ出てきた黒い短衫姿の愛鈴に気付かず、
刃を振りかざすどら息子の腕を飛くんが蹴り上げます。
次いで、奴が悲鳴を上げた隙を突いて、飛くんは愛鈴を呼びながら、その腕を捻って動きを封じます。
そして、呼ばれた名に驚く相手の顔に、羅漢の腕を借りて高く跳躍した愛鈴が、容赦ない飛び蹴りを浴びせるのです(笑)。
しかし、江家息子を襲う災難はこれだけではありませんでした(自業自得なので同情の余地無しですが/苦笑)。
店の中から出てきた梅雪楼主人に、愛想を向けられながら、店の中へ引きずり込まれた彼を待っていたのは、
ふざけ半分に娼妓の纏うような色とりどりの旗袍(チーパオ)を引っ掛けた花路の仲間たちでした。
揃って逞しい体躯の花路の男たちに囲まれて、江家息子はとうとう泣き面。
仲間に投げて寄越された旗袍を肩に掛けた飛くんに、脅し文句付きで、
もう二度と勝手はしないと約束をさせられ、彼はその場から逃げ出していきます。
これにて一件落着と、野次馬も含めた歓声が響く中。
何と、ふいにマクがやってきます。
あっけに取られる一堂を見回し、皮肉気な言葉を吐くマクは、飛くんの腕を掴んで、際どい(毎度ですが/笑)戯言を言います。
ここで引用すると長いので、ここでは敢えて取り上げません(笑)。
気になる方は、是非本編を御覧下さいませ♪
色街一の妓楼でそのような戯言を向けられた飛くんはしかめっ面。
それに揶揄するような笑みを浮かべたマクが更なる戯言を追加します。

「とはいえ、翡翠の旗袍がよく似合う。妓楼で野暮な台詞はよせと憤るなら、そうだな……主人、この娼妓を一晩」
「ふ……」
ふざけるな、と腕ふり払う飛の台詞よりも、どっとまわりから押し寄せてくる仲間たちのほうが早かった。
たちまち色とりどりの旗袍が入り乱れて、だれがだれやらわからなくなる。

                                                  (本文82頁より)

「た、大変だ!このままじゃ俺たちの頭が『白龍』の毒牙に…!(悲鳴)
っっ身を挺してでも俺たちがお守りしなけりゃあ!!」
……と、↑の場面の花路の仲間たちの気持ちを代弁してみました。
80%の確率で一致していると確信しています(笑)。

そんなこんなで、エピローグ。
愛鈴は梅雪楼の娼妓見習いとして、歌舞を習う為、南里、朱龍(チューロン)茶館に預けられることになりました。
留守番すると言う羅漢を引きずるようにして、彼女の見送りにやってきた飛くんは、
気を遣って愛鈴と羅漢をふたりにしてやります。
んが、別れ際に愛鈴から、「お守りに」とプレゼントを渡されたにも拘らず、
羅漢は一向に愛鈴の気持ちに気付いておりませんでした(苦笑)。
飛くんに花路を抜けられたら困ると見当違いなことを口にする羅漢に、
思わず呆れて、もし自分が生まれ変わって女になったとしても、羅漢を好きになるのは止めておくと言ってしまう飛くん。
遠回しに飛くんにも振られてしまった訳ですが(笑)、そんな超鈍感男、羅漢の行く末に幸はあるのか(苦笑)。
そう言えば以前、今までで一番胸高鳴ったのは、
飛くんとやり合った(変な意味でなく!←訊いてない/笑)ときだと言ってましたな、この男は。
そんな羅漢は飛くんの傍らにあれればそれで良いのかもしれません、例え、一番にはなれなくとも(苦笑)。
例え、コブ(マク/笑)付きでも(痛)。

さて、本編とは打って変わって、賑やかでほのぼのしたお話となった「花街恋夜」れびゅもここまで。
一冊の半分しか占めていない話のレビューにここまで行数を使ってしまうのってどうなのよ?
という気がしなくもないですが(苦笑)、これも飛くんへの尽きぬ愛ゆえ♪ということで、
受け止めていただければ幸いです(笑)。
ではでは。
長らくのお付き合い有難う御座いました♪


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